運転資本 (うんてんしほん)
会社が日々の営業を回すために必要な運転資金のことです。
実務では〈売上債権+棚卸資産−仕入債務〉=ネット運転資本として捉え、短期の資金余力や資金繰りの健全性を測ります。
M&Aでは将来キャッシュフローの前提に直結する重要項目で、運転資本が増えるほど現金需要が高まりフリーキャッシュフローが減少します。
また、クロージング時の価格調整にも用いられるため、季節性や回収・在庫・支払条件を踏まえ、基準値と調整方法を事前に合意しておくことが重要です。
役割・実務での使われ方
企業の資金繰り体力のバロメーター
一般的に運転資本がプラスということは「入金(売掛金回収など)よりも先に、出金(仕入代金支払など)や在庫確保のために現金が出ていっている状態」を指します。売上が増えるほどこの「立て替え資金」も多く必要になるため、成長企業ほど資金繰り管理が重要である証左となります。
企業価値評価(バリュエーション)におけるCF予測の前提
DCF法などで企業価値を計算する際、将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測します。
FCFは「本業の儲け(営業CF)」から「投資」を引いて計算しますが、運転資本の増加も「現金が出ていく投資」とみなされます。
つまり運転資本が増加する計画だと、将来の現金収入(FCF)が減り、結果として企業価値評価額が下がる要因となります。
M&Aクロージング時の価格調整の基準
最終契約締結から実際の引渡し(クロージング)までの間にも、日々の事業活動によって運転資本の額は変動します。
そのためあらかじめ「基準となる運転資本の額(基準値)」を決めておき、クロージング時点の実際の額が基準値より増えていれば買収価格に上乗せし、減っていれば差し引くといった「価格調整」が行われることがあります。
注意点
季節変動や特殊要因の排除
対象会社が季節によって在庫や売掛金が大きく変動する業種の場合、いつの時点を「基準」とするかで金額が大きく異なります。M&Aの価格調整では、こうした季節性や一時的な滞留債権などの特殊要因を排除した「正常な運転資本」の水準を巡って、売り手と買い手の認識が対立しやすいため事前の綿密なすり合わせが不可欠です。